Article

“人と出会い、神と交わり、愛の火の燃えるところ”

2019年夏キャンプ報告

“たとえば1949年、淡路で青年たちがキャンプのプログラムを持った際、それぞれが戦争中の思い出を語り、大きな歴史的過ちを自らも担ったことの悔悟と、そのゆえに歩まねばならぬ贖罪への道を誓って、キャンプファイヤーが涙の集会となったとき、それを眺めていた地元の青年たちにも深い感銘を与えたというエピソードなどが生まれたのである。
— 今井鎮雄 神戸とYMCA100年 緒言より”

今からちょうど70年前、青年たちはこんな話をしながら涙の火を囲んでいました。余島キャンプの歴史は古く、厳格です。時は明治、「青年に温かい握手を」の合言葉と共に始まった神戸YMCAの歩みが、戦後青年たちの思いと融合し、余島というキャンプ地との巡り合いを経て、現在のキャンプの原型が形作られていったのです。1953年肢体不自由児キャンプは「人間の尊厳とは何か」を社会に問うために始まり、その時に最も弱くされている人間に対して、キャンプを通して手を差し伸べなさいという強いメッセージを、後世にも伝えています。

キャンプは楽しさやおもしろさの裏に、生きることの本質を問う「厳しさ」が潜んでいます。私たちは時として自然の脅威に触れ、自分自身の「生」を実感し、最愛の人との別れを通して「生」の儚さを突きつけられるのです。

暑い夏の余島に、日本各地、世界各国からキャンパーがやってきました。私たちが創り上げてきた、“I’m a Partner”という現代のメッセージは、その想いが求心力を持って広がっています。原発の問題が収束したとは言えない福島からやって来た子どもたちと中高生。福岡から40名のキャンパーとやって来たディレクター。身体ダイバーシティ、発達や心理面でのダイバーシティ、社会的にいろいろな境遇で生きるダイバーシティ。そして北京、上海、南京、台湾からやって来たキャンパーたち。それを応援するたくさんのスタッフ。これまでのすべての接点が新たな接点を生み、それは円を超えて永遠と交わる無限大の記号のように、巡り合いとなって私たちに One Campを作らせました。

私はカウンシルファイヤーの火を囲みながら、こんな話をしました。
「ここにいる私たちはそんなに遠くない昔に、殺し合っていました。争っていました。障害者を差別していました。でも今日のこの日、私たちは共に生き、キャンプを通して、友となったのです。きっと先人たちも、ここに集って喜んでいることでしょう」

“優しいね、優しい” 涙ながらにそう言って、両手をぎゅっと握りしめてくれたのは、北京からきたお父さんでした。その時私は不思議と、現世ではない何かと繋がった気がしたのです。

それはただの儚い夢なのかもしれないが、心の痛みを乗り越え、ゆっくりでも前へ進もうとする人々へ、そしてまったく前に進む元気がない人々へも、「それでいいんだ」というすべてを包み込む余島の優しさが、伝わることを願っている。
今も空で見守ってくれている方々を慕んで。

キャンプディレクター 阪田 晃一

第13回 I’m a Partner Summer 2019
日 程:2019年7月28日〜8月1日 4泊5日
於  :YMCA余島野外活動センター
招待数:福島の中高生8名、小学生30名
※福島保養プロジェクト(コープこうべ、ユニセフ、YMCA共催)One Campと同時開催
主 催:神戸YMCA
協 力:パートナーお一人おひとりの皆さま
Ladies & Gentlemenよしましよ、学校法人啓明学院
サントリーホールディングス㈱、余島キャンプOBOG会、生活協同組合コープこうべ、兵庫県ユニセフ協会
NPO法人ルワンダの教育を考える会
㈱光陽社、㈱毛利マーク、non-standard world, Inc.
ワイズメンズクラブ西日本区六甲部
公益財団法人日本YMCA同盟、
社会福祉法人神戸YMCA福祉会、学校法人神戸YMCA学園
株式会社上組

Article

“わたしは植え、アポロは水を注いだ ”

2019年春キャンプ報告

「わたしは植え、アポロは水を注いだ。しかし、成長させてくださったのは神です。」

コリント信徒への手紙にはこう書いてある。パウロはイエスと出会い、イエスという偉大な行為を人々に伝えるべく旅に出た。それから永い時間が流れた。私たちにとっては永遠とも思えるようなこの時間も、輪廻転生を繰り返す宇宙という営みの中では瞬く間なのかもしれない。

YMCAはイギリス・ロンドンの地で、1844年に、産業革命という時代の大きな変わり目にいた若者たちによって生まれた。善く生きるための「キリスト生活の実践」は、今もなおYMCAの根底を支えている。しかし「印を欲しがってはならない」と聖書が警告するように、その形やあり方だけを求めるようになると、途端に大切なものを見失ってしまう。

2011年の震災以降、若者はその時と同様に心の拠り所を探していた。何かしたいけれど何をすればいいのか。未曾有の災害に立ち向かう若者たちの前に、YMCAははじめその機能を果たせなかった。やがて若者たちは、自らリーダー会を結成した。キャンプには定員を超える申し込みがいつもあった。「未来の指導者になって欲しい」そう伝えるキャンプの多くで、「リーダーになりたい」その夢を叶えるシステムは機能していなかった。パートナーキャンプは多くの中学生、高校生キャンパーをLIT(Leader in Training)として迎えるキャンプに成長した。

ファンドレイザーは大変多くの寄付を集めた。企業もたくさん協力した。しかし多くの参画を受け留める度量が、YMCAには無かった。
外からの大いなる圧力を受け、埋もれていた「多様性を受容する力」が目を覚ましたのだ。

若者は時より、涙を流していた。理想とかけ離れた現実に夢を砕かれ、心を痛めたのだ。

志半ばで踵を返した仲間も見送った。真実を追い求める道は、決して自分たちにとって都合の良いものではなかった。
「多様性を認め、受容する社会を実現する」

排他的で標準化された社会に生きる若者が、その理不尽さに勇気と自由への憧れを持って立ち向かった結果、キャンプは新たなステージへと進んだ。
「人間の尊厳とはなにかを考えなさい」
今も先人のこの言霊が私たちを真実へを導いてくれる。

撒かれた種のあるものは、種のままその生涯を終える。芽吹くも、志半ばで地に帰るものもいる。しかしまさに神の仕業としか思えない感動的な場面に出会うたび、確かに神はそこにいるのかもしれないと感じるのである。そしてそれはおそらく、一人ひとりの中に存在する良心にも似た、真実の声なのである。

キャンプディレクター 阪田晃一(神戸YMCA)

春のキャンプご報告
第11回 Iʼm a Partner Spring 2019
日 程:2019年3月31日〜4月4日 4泊5日
於 :YMCA余島野外活動センター
招待数:福島の中高生2名 小学生9名
※福島保養プロジェクト(コープこうべ、ユニセフ、YMCA 共催)と同時開催
ボランティア数:5名(当日述べ人数)
費 用:1,000,000円(よしましよ寄付金) 主 催:神戶YMCA
協 力:パートナーお一人おひとりの皆さま
Ladies & Gentlemenよしましよ、学校法人啓明学院
サントリーホールディングス(株)、余島キャンプOBOG会、 生活協同組合コープこうべ
兵庫県ユニセフ協会 NPO法人ルワンダの教育を考える会 (株)光陽社、(株)毛利マーク、non-standard world, Inc.
ワイズメンズクラブ⻄日本区六甲部
公益財団法人本YMCA同盟
社会福祉法人神戶YMCA福祉会
学校法人神戶YMCA学園