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“ねえ、1+1ってなんで?”

”食事を終え、キャビンに戻るキャンパーたち”
一緒にいることが当たり前になるとそれが絆になる

人と関わることがあまり好きじゃなかった高校1年生の私が、たった一度のキャンプで、生きることの喜びを知りました。

福島の子どもたちとのキャンプ。

「私ゆうこちゃんのこと絶対忘れないよ!」

スタッフとして何をしていいか分からず、満足に動けなかった私に、ある1人の女の子が言った言葉です。彼女の名前も知らないし、なんでそんなことを言ってくれたのかも分からなかったけど、今でも彼女の顔と声をはっきり覚えています。

本当に嬉しくて「あぁまたキャンプに来たい」と思った瞬間。
あれから7年間、夏は毎年余島にきて、福島のみんなと会いました。
食堂でわれはふくろうを歌う時、ふとした時にグループでマイケルを歌う時、カウンシルファイヤーでメンバーが勇気を出す姿を見る時、その瞬間瞬間が本当に好きで、涙が出るほど幸せで、生きている喜びを感じました。

今年は、フルで参加できる最後のpartner。
そして、みんなでつくってきたOneCamp。
思いが溢れて、OneCampの参加者が余島に着いた時は、ひとりで泣きました。

「1+1=1ってなんで?」

4日目の昼ご飯の時、しおりを見たメンバーから聞かれました。

「りんごとみかんはフルーツって数えたら1つやろ?私とあなたも、同じ人間って考えたら1やろ?」

そういうと、すごく納得した様子。私はみんなを誇りに思いました。
暗くなるとカウンシルファイヤーです。なんて尊い時間なんだろう…そう思いながら、みんなの思いを聞いていました。すると、グループの1人の女の子が立ち上がり、話し始めました。私は彼女の話で、このフレーズが印象強くて忘れられません。

「言葉は通じなくても同じ人間だし、色んな人と関われて楽しかった。」

あぁ、今回のキャンプはいいキャンプだったんだ。彼女が教えてくれました。
「来年LITで来たい!」「また会おうね!」そう言って帰って言ったみんな。今年もまた、生きる喜びをもらいました。

たくさんの福島のメンバーに会いました。
たくさんのpartnerに会いました。

OneCampをするために、たくさんの方々と出会いました。
OneCampで、多様な方達と出会いました。

本当に、本当に、本当に、全てが宝物です。
一緒に過ごすだけで幸せになれる人がいる、もちろんその逆で、一緒にいることが辛い人もいる。

でも、みんな同じ人間です。

もしキャンプが現実社会の縮図なら、キャンプで得たものは現実社会を変える力になる。

私たちはキャンプに、もっと多様な人を集めなければいけません。私たちはもっと、多様な人と関われる人間にならなければなりません。

改善点はたくさんあります。でも、OneCampは最高のスタートをきりました。

これから、第1回OneCamp参加者のみなさんとともに、福島のみんなも一緒に、理想の社会を目指したキャンプを、そして誰もが当たり前に生きられる社会をつくるため、未来に託しながら、生きていきたいと思います。

感謝の気持ちであふれています。
本当にありがとうございました。

ユニットディレクター・カウンセラー
古川 由布子(関西学院大学4回生)


第11回 I’m a Partner Summer 2018
日 程:2018年7月27日〜7月31日 4泊5日
於  :YMCA余島野外活動センター
招待数:福島の中高生14名、小学生30名
※福島保養プロジェクト(コープこうべ、ユニセフ、YMCA共催)One Campと同時開催
主 催:神戸YMCA
協 力:パートナーお一人おひとりの皆さま
Ladies & Gentlemenよしましよ、学校法人啓明学院
サントリーホールディングス㈱、余島キャンプOBOG会、生活協同組合コープこうべ、兵庫県ユニセフ協会
NPO法人ルワンダの教育を考える会
㈱光陽社、㈱毛利マーク、non-standard world, Inc.
ワイズメンズクラブ西日本区六甲部
公益財団法人日本YMCA同盟、
社会福祉法人神戸YMCA福祉会、学校法人神戸YMCA学園
株式会社上組

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「協力って、難しいけど」Spring 2018

”キャンプ旗を前に、ハイチーズ!?”

 ある人に出会ったら、どんなことを考えるだろうか。年齢は?出身は?学生だろうか、会社で働いる人だろうか。役職は?大人はそう考える。
 ある人に出会ったら何を感じるだろうか。その出で立ちだろうか。行動だろうか。その人が発する言葉や、醸し出す雰囲気だろうか。子どもたちはそんな感じ方をする。
 キャンプの世界は、「私たちが暮らす日常社会の縮図」であると言われる。今回のキャンプもまさに、良くも悪くも現代日本社会を映し出した。ある男の子は、言葉遣いが悪く、どんな時でも「あ!?」と返事をする子供だった。みんなに怒られた。「その返事はなに!直しなさい!」。同級生にも、リーダーにも怒られた。その男の子はどんな時でも「自分勝手」に見えた。楽しい時は楽しそうに過ごし、どんな友達とも遊び、たまに怒られしょぼんとし、また気分を変えて走り回っていた。
 静寂の火を囲み、最後日の夜を過ごすカウンシルファイヤー。今回はみんなで持ち寄った小さな小さな小枝を集めて、火をつけた。火はゆっくりと一人一人の心の中に入っていった。瞬間に明るくなって、その時はすぐに過ぎ、今度は収束に向けてゆっくりと輝きだした。物事には始まりと終わりがある。そして老いも若いもある。一言に「火」では表せない。
 誰も喋らないカウンシルファイヤー。沈黙という美しい時が流れる。火が老いへと進み始めた時に訪ねた。「ねえ、キャンプどうだった?」彼は答えた。「うーん。みんなで料理する時とか、遊ぶ時に、みんな協力しようとしててよかった。でも協力ってやっぱり、難しい」。そしてある女の子が続いた。「みんなで協力するゲーム?あれ難しかったけど、でもよかった。楽しかった」。
 どうしても私たちはその人の外面を見て過ごす。内面にまで到達しないまま別れを迎えてしまうことがほとんどだ。自分勝手だと見られていた彼は全てを知っていた。そして子どもたちは真実を語っていた。
 帰りの新幹線で、彼は家に帰るため途中駅で降りた。それまで明るかった彼は、その駅が近づくにつれて真剣になっていった。彼はみんなと住所を交換した。そして次のキャンプには来るのかと、みんなに聞いて回った。彼が別れを済ませて、母親が迎えに来ているホームに降りると、まっすぐとこちらを向き、一人一人を一生懸命見ている。その眼差しは、見送る者の心を打った。「ねえ泣いてると思う」。ある年長者の女の子がその姿を見て言った。友情にかたく結ばれたキャンパーたちの別れの時だった。
 さあ、私たちも頑張ろう。キャンプが日常世界を変える力があるのならば、日常世界もまた、キャンプの世界を変えることができるのだ。

キャンプディレクター 阪田晃一(神戸YMCA)


第10回 I’m a Partner Spring 2018
日 程:2018年3月31日〜4月4日 4泊5日
於  :YMCA余島野外活動センター
招待数:福島の中高生2名 小学生9名
※福島保養プロジェクト(コープこうべ、ユニセフ、YMCA共催)と同時開催
ボランティア数:18名(当日述べ人数)
費 用:1,300,000円(寄付金・参加費・協賛金)
主 催:神戸YMCA
協 力:パートナーお一人おひとりの皆さま
Ladies & Gentlemenよしましよ、学校法人啓明学院
サントリーホールディングス㈱、余島キャンプOBOG会、生活協同組合コープこうべ、兵庫県ユニセフ協会
NPO法人ルワンダの教育を考える会
㈱光陽社、㈱毛利マーク、non-standard world, Inc.
ワイズメンズクラブ西日本区六甲部
公益財団法人本YMCA同盟、
社会福祉法人神戸YMCA福祉会、学校法人神戸YMCA学園

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「恩返しがしたいんです」Summer 2017

”Going on a bear hunt! キャンプの出し物で水をかぶって皆を楽しませるキャンパーとリーダー” スタンツナイトでの一コマ

“Going on a bear hunt! Going on a bear hunt! We’re not scare!!(クマを狩りにいこうか!クマを狩りにいこうか!私たちは怖くないよ!)” 

 元気な掛け声が、キャンプ最終日の夕方、静かな余島にこだましていた。各グループやリーダー達からの出し物で盛り上がり、キャンプを過ごしてきた各々が、一緒に過ごしてきた仲間達を楽しませるためのスタンツナイトは、この日も大盛りあがりだった。「クマ狩り」の出し物は、探検隊がクマを狩りに行く珍道中を演じるものだ。泥を顔に塗ったり、水をかぶったりする体当たりの演技で、いつもはリーダーによる出し物だった。この日スタンツナイトの大トリを飾ったのは、初日にリーダー達のクマ狩りを見て、それを自分たちでアレンジした女の子グループだった。会場は湧いた。大いに湧いた。笑顔が弾け、そこにいることが幸せだと誰もが感じた瞬間だった。
 第9回目を迎えたパートナーキャンプは、これまでのキャンプに参加した福島の中高生が、指導者として参加してくれたおかげで、さらに素晴らしいものになった。彼ら彼女らの意気込みは、大人がたじろいてしまうほどだった。私たちも真剣にその挑戦を受けた。「小学生の時のキャンプが本当に楽しかった。みんながしてくれたように、リーダーになって恩返ししたい」誰もが口を揃えてそう言った。
 今回30名の子どもたちと14名の中高生リーダーが福島から参加した。キャンプ参加後のアンケートに、これまでにない項目を追加した。
「あなたは将来リーダーとなってキャンプに参加したいですか?」
その問いに全員が「はい」と答えた。「LIT(Leader in Training)で参加してくれたお兄さん、お姉さんに憧れて、次はリーダーで行くと今から張り切っています」そうメッセージを寄せてくれる保護者もいた。思いや願いが形なっていくサイクルが生まれたのだ。そして神戸から参加した中高生、大学生リーダーもまた、大きな仕事をやり遂げた。これまでの「キャンパーを導く」という役割から、「キャンパーを導くリーダーの候補生たちを導く」まさに「パートナー」という役割をキャンプの中に見出しのだ。共に悩み、指導者とは何であるかを考え、実践する姿は私に次のビジョンを示した。
「あなたは将来、キャンプで経験したことを生かして、どんな人間に成長していきたいですか?」
 きっとみんな、驚くほど勇敢な答えを内に秘めているに違いない。今はまだ夢のようなこの問いが、近い将来現実のものとなって、懐かしい面影を残した精悍な顔つきでまた、キャンプに現れてくれることを楽しみにしている。

キャンプディレクター 阪田晃一(神戸YMCA)


第9回 I’m a Partner Summer 2017
日 程:2017年7月29日〜8月2日 4泊5日
於  :YMCA余島野外活動センター
招待数:福島の中高生14名、小学生30名
※福島保養プロジェクト(コープこうべ、ユニセフ、YMCA共催)と同時開催
ボランティア数:23名(当日述べ人数)
費 用:1,356,000円(寄付金・参加費・協賛金)
    内よしましよ800,000円
主 催:神戸YMCA
協 力:パートナーお一人おひとりの皆さま
Ladies & Gentlemenよしましよ、学校法人啓明学院
サントリーホールディングス㈱、余島キャンプOBOG会、生活協同組合コープこうべ、兵庫県ユニセフ協会
NPO法人ルワンダの教育を考える会
㈱光陽社、㈱毛利マーク、non-standard world, Inc.
ワイズメンズクラブ西日本区六甲部
公益財団法人本YMCA同盟、
社会福祉法人神戸YMCA福祉会、学校法人神戸YMCA学園

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If camp is .. もしキャンプが… Spring 2017

”こころが笑う” 2017年3月早春の余島にて

“If camp is indeed a microcosm of the real world, then the skills learned will carry over to that world.”
「もしキャンプが本当にリアルな世界の縮図なら、キャンプで得たものは現実の世界へと引き継がれるだろう」

 私たちキャンプの指導者にとって、この言葉はとても大きな意味を持つ。私たちが参加者と創り出すキャンプの世界は、良いも悪いも現実の世界から引き起こされ、現実の世界へと戻って行く。余島の浜に寄せては返す波のように。ただ一つだけ自然界と違うところは、私たちは意図的に何かをすることができる。
 ちょうど遠くの海からやってきた波に精霊船を浮かべて、祖先を迎え送り出すように。
 第8回目となるパートナーキャンプには、福島に加え、熊本からも子どもたちがやって来た。「私たちはパートナー」その想いが、これまでの枠を簡単に飛び越え、新たな絆を生んだ。「結構揺れたよね。その時どうしてた?」自然とそんな会話が生まれ、東北と九州、まったく違う気質の子どもたちはキャンプを通して、少しずつ、でも確実に心を通わせていく。
 驚くほど勇敢なキャンプカウンセラーは、今回も多くの仕事を成し遂げた。私たちは我慢した。
「いいかい。今回は参加者の力を最大限に引き出すと決めた。だから、とにかく見守ることに徹してみよう。もし仲間割れを起こしているなら、そしてそれが深刻な仲間割れなら、それはおそらく今、子どもたちが現実の世界で抱えている課題なんだろう。だから、それを取り除いてしまうのではなく、一緒に、自分たちの力で解決していこうとする力を、なんとか引き出せないだろうか」 
 キャンプ三日目の朝、キャンパーたちにその日の活動が告げられた。「今日は自分たちの力で、小豆島に渡って、画家の宮田先生の家を訪ねて欲しい。そこで、故郷の両親に絵葉書を書こう」。余島から飛び出し、自分たちの力だけでバスを乗り継いで目的地を目指す。距離にしてたった20km。車に乗ればすぐの目的地は、遠かった。バスに乗り遅れ、道を間違えた。争いも起こった。それでもカウンセラーは我慢した。何も言わずに寄り添い続けた。結果として、満足に宮田先生のアトリエを訪ねることはできなかった。絵葉書も急いで書いた。でもその絵葉書を描く子どもたちは、なんとなく逞しく見えた。
 「あの子が、あの場面で自分から謝るなんて。そんな光景は今まで見たことがなかったんです」。熊本から子どもたちを連れて来てくれたディレクターが、そう教えてくれた。地図を逆さまに読み間違え、全く逆の方向にグループのみんなを導いてしまった男の子は、素直にこう言った。
「ごめんね。僕が地図を間違えちゃったから」
 間違えてもやり直したらいい。私たちには未来がある。キャンプではなんでも試したらいい。それだけの包容力がある。いつかこの夢のようなキャンプの世界が現実のものとなるように。
 私たちは今日も現実に向き合っている。

キャンプディレクター 阪田晃一(神戸YMCA)


第8回 I’m a Partner Spring ショートステイ2017
日 程:2017年3月31日〜4月2日 4泊5日
於  :YMCA余島野外活動センター
招待数:福島の小学生8名・中学生2名、
    阿蘇の小学生5名
ボランティア数:8名(当日述べ人数)
費 用:1,000,000円(寄付金)
主 催:神戸YMCA
協 力:パートナーお一人おひとりの皆さま
Ladies & Gentlemenよしましよ、学校法人啓明学院
サントリーホールディングス㈱、余島キャンプOBOG会、生活協同組合コープこうべ、兵庫県ユニセフ協会
NPO法人ルワンダの教育を考える会
㈱光陽社、㈱毛利マーク、non-standard world, Inc.
ワイズメンズクラブ西日本区六甲部
公益財団法人本YMCA同盟、
社会福祉法人神戸YMCA福祉会、学校法人神戸YMCA学園