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忘れたくない経験 - Story of Camp Counselor

忘れたくない経験

啓明学院 指宿 ひかり

私は三月三十一日から四月四日まで、四泊五日のYMCA主催である福島の子供たちを香川県の余島と言う島に招いて行うキャンプにリーダーとして参加しました。今回の余島での経験は、本当に楽しく、素晴らしいものでした。しかし、それと同時に今まで感じたことのない戸惑いや口惜しさ、悲しみを知るキャンプでした。
最初の顔合わせのミーティング。高一からは一人の参加で、話をしたことのない先輩ばかりで凄く緊張していました。また、東北大震災における問題意識など、次々に出る難しい質問を考えるのに精一杯で少し不安の残るものでした。しかし二回目のミーティングからは具体的な内容の説明が始まり、このキャンプがどういったものなのか知ることが出来ました。トラウマについての学習を共にしたり、意見交換をするうちに、少しずつ先輩とも話せるようになり、事前勉強をしたこともあり、一回目より話についていけるようになりました。私は、このI am a partner campとは福島の子供たちを余島に招き、ただ一緒に楽しく伸び伸びと過ごすためのキャンプだと思っていました。しかし計四回のミーティングを通して、単に楽しむだけではなく、子供たちが復興というものを考えるためのきっかけを作るためのとても重要なキャンプだと知りました。partner03キャンプの二日前、余島にリーダーとして行く何人かはYMCA主催の、主に東北大震災で被災された方のためのリフレッシュキャンプを行っている「未来を考える会」に参加させていただきました。そこでは実際に震災時東京に住んでいて、その後、兵庫県に放射能などの影響で越して来られた方から現在の福島の事実を聞かせていただきました。その話から、新聞やニュースが伝えていることと実際の様子が全く違うことや、放射能はいまだに危険な量が漏れ続けていること、放射能の影響で原因不明の体調不良になったり亡くなったりする方が四年たった今でも数えきれない程いることを初めて知りました。特に、話をして下さった方の奥さんの友達は事故後七人の子供を流産していて、これはチェルノブイリと同じことが起こっているという話は本当にショックで、現在正しい情報がどれだけ少ないのか、正しい情報を知るのがどれほど大切かということを痛感しました。
そして、キャンプ初日、私は男子八人班のリーダーをしました。先にリーダーが島に行き、キャビンの飾りつけをしました。ギリギリに終わったけれど、今までで一番クオリティが高いとチーフリーダーにも言って頂き嬉しかったです。そして待ちに待った子供たちの到着。みんなハイタッチもしてくれず、緊張しているのが分かりました。私は緊張というのはなかったのですが、話しかけてもあまり子供たちの反応が良くなくて、どうしようという思いを持っていました。でも班のみんなで一つのキャビンに集まり自己紹介をしてあだ名を決めて、軽いゲームをすると次第に緊張が解けた様子でした。そのあとの夕食では子供たちの方から色々な質問が出るようになり、私も何か聞くとすぐに返事が返ってきて、どんどん話が膨らんで、私自身もとても楽しくこの時間を終えることができました。私はその日、阪田さんから大切なことを教わりました。それは子供たちをまとめようとしなくてよいということです。子供たちのしたいことをさせる、この考えをキャンプ二日目から意識しました。そうすることによって子供同士の会話が弾み、責任感が生まれ、グループの中で「今それしてたら皆困るじゃん!」という声が出てきました。私はリーダーがまとめようと焦って指示を出し続けるよりも、締めるところはちゃんとするが、他は子供がしたいようにさせる方が様々な発見ができ、子供たちの中での気付きが倍ほど増えることを実感しました。
私が今回のキャンプで一番印象に残ったのは野外料理です。私自身、何をしたらよいのか、どう指示を出せば効率良く進むのかを考えに考えて必死になっていました。しかし皆が自ら何をすればいいのか考えて洗い物などを進んでしている姿や、野菜をとても上手に切っているのを見て、「もう指示はいらないな、ここからは事前学習で習った放任の時期だな。」と思いました。そしてとにかく見守り、何をしていいか困っている子には声をかけて出来るだけ子供たちだけで作りました。その結果、カレー選手権で一位になることが出来ました。水が少ないというハプニングもあったのですが、どうしたら美味しくなるかを皆でたくさん話し合った結果、一位になれたと思います。本当に嬉しくて、班全員がとても良い顔をして笑っていたのが印象的でした。この後から班の仲が深まり、各自に責任感が生まれたことを感じました。
四日目のカウンシル後の振り返り。とても静かに全員が楽しかったことや、福島に帰ってどうしたいかを発言しました。初日は全員で座って人の話を聞くということが難しかったけれど、このときは本当に一人一人集中して聞いていました。みんなが、それまで口にすることのなかった福島での暮らしや、仮設住宅にいるおじいちゃんとおばあちゃんを早く出してあげたい、と涙ながらに語ってくれるのを聞き、私も涙が溢れてきました。この振り返りは本当に有意義な時間でした。
最終日。朝がいつもより早かったのですが、私も含めみんなすぐに起きて、朝食の時には、歌の振付をいつもしない子がこの日はやっていました。お別れは本当に早く、涙が止まりませんでした。一度きりの出会いというのは別れがこんなにも辛いのか、と自分でも驚くほど悲しく切ない気持ちでした。
私はこのキャンプに参加できて、このメンバーで過ごせることができて本当に幸せでした。こんなにたくさんの失敗と成功、焦りや悩みを感じたのは初めてでした。子供たちに自分で考えさせる時間を与えず、答えを教えてしまうという私自身の欠点を見つけ、そこをカバーするためにはどうしたらよいか色々考えました。また、子供が誰かの傍に寄って行ったりしているときは、伝えたいことや話したいことがある時だと分かってはいたけれど、実際に誰かの傍に行っている時には気付けず声をかけてしまった事も大きな反省です。途中で学ぶことばかりでしたが、本当にすべての経験が楽しかったです。絶対に次も参加して、今回の反省や感じたことを子供たちと過ごす際に活かしたいです。
今回のキャンプに関わってくださった方々、参加する機会を与えてくださった方々、行かせて下さった方々、全ての人に感謝します。本当にありがとうございました!

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また会いたい — 強く生きて欲しいと思った

YMCAでは多くのボランティアが活躍しています。今回も社会人、大学生、高校生のボランティアリーダーが、こどもたちと5日間を過ごしました。みんな、リーダーのことが大好きです。

YMCAでは多くのボランティアが活躍しています。今回も社会人、大学生、高校生のボランティアリーダーが、こどもたちと5日間を過ごしました。みんな、リーダーのことが大好きです。

震災から二年半、福島では今も日中決められた時間しか外で遊ぶことができない子どもたちがたくさんいます。そんな中で行われたキャンプでした。

午前中はカヌー、釣り、アーチェリー等、毎日自分の参加したいプログラムを選び、余島の自然の中で思いっきり楽しみました。自分の釣った魚を料理してもらい、食べることができた子どもたちは「これ俺が釣った魚!」と、とても嬉しそうでした。

午後は楽しみにしていた水泳。飛び込み台から勇気を振り絞り、思いっきりジャンプ!マット渡りや相撲大会など迫力のあるプログラムに積極的に挑戦していました。2日目の夜は、火を囲んでゲームをしたり踊ったりするボンファイヤー。アメリカ版猛獣狩りをみた子どもたちは「おもしろかった!」笑いながらキャビンに帰っていきました。

4日目には、コープこうべ福島のこども保養プロジェクト、コープの組合員さんと夏祭りを開催!自分たちが飯盒で炊いた米を手に、作っていただいたカレーや焼きそばなどたくさんの屋台に囲まれ、とても楽しいお祭りでした。「漕げよマイケル」を歌いながら浜に出ると、海に沈む夕日がとてもきれいに見えました。少しの間、波の音と夕日に囲まれながら、キャンプを顧みました。

最後の夜、皆で火を囲んでのカウンシルファイヤー。このキャンプに対する不安だった気持ち、期待していた気持ち、嬉しかったこと、自分の言葉で皆に伝えながらキャンプを振り返りました。

新幹線の中では、帰りたくない、また来年も来たいと涙を流しながらのお別れでした。余島で感じたことを忘れずに強く生きて欲しい、そしてまた来年も子どもたちと一緒にキャンプがしたいと強く願います。

プログラムチーフ 石田 詩織
神戸親和女子大学4回生