One Camp. Microcosm of the real world. est in YOSHIMA

One CampReport 2019

2019.7.28(SUN) - 8.1(THU)

Report キャンプレポート

2019年のOne Campには、前年に引き続き、様々な背景を持つ人々が参加した。“キャンプは現実の世界の縮図である。キャンプで得た学びは、現実の社会を変える力になるであろう”。これは、私たちがいつも大切にしているスローガンだ。現実の世界は、日本国内でも、アジア諸国間でも、様々な軋轢が存在している。一定の期間を多様な人々と過ごすキャンプの体験は、包摂性の大切さと難しさ、そしてコツを教えてくれる。大いに遊び、大いに食べ、大いに寝る。“生活を共にする”ことで人は、他者を理解しようとするようになる。そして人は、仲間を得ることで、共に未来を見据え、未来に向かって今を生きるようになる。

キャンプを終えるとすぐ、あるキャンパーから手紙が届いた。知的障害で普段就労支援で働くAさんだ。キャンプがとても楽しく嬉しかったようだ。Aさんは、キャンプ中遊びながら、ずっと車とバイクの話をしていた。キャンプで行き交うたくさんの人々がAさんの話を聞いて、Aさんが車とバイクが好きなのだと知った。Aさんはこう思ったそうだ。“こんなに好きなバイクの話をしても良いんだ”。確かに、Aさんはずっと同じ話をしている。もしかしたら普段は、同じ話は何度もできないのかもしれない。でもキャンプでは、熱心な人も暇な人もいるし、何より150名の住人がいて、どこかで必ずすれ違う。“自分の好きなことを、好きなだけ話しても良いんだ”。そう喜んでもらえたのが嬉しかった。

ある中国人のお父さんは、息子さんのキャンプについてきたようだった。暑い中、キャンプ場での生活が辛くないか不安に思っていた。道ですれ違うと笑顔で会釈を交わした。日本語も少しわかるようだった。最終日の夜、カウンシルファイヤーの火を囲んで、私はこんな話をした。“このキャンプには、150名もの人が集いました。その中には障害者もいます。私たちはそんなに遠くない昔、傷つけあっていました。障害者の人権が守られない時があったのです。そしてそれは今もまだ続いています。そしてこの中には、日本に住む人、北京、上海、南京に住む人、台湾に住む人がいます。でも私たちはそんなに遠くない昔、殺し合っていたのです。様々なバックグラウンドで過ごす人々が、こうして共に、キャンプで生活できたことを本当に嬉しく思っています。“戦争責任”に向き合おうとしてこのキャンプ場を作った先人たちも、ここできっと喜んでいると思います。みなさん、またキャンプで会いましょう。”お父さんはカウンシルファイヤー場からの帰り、“優しいね、優しいね”と涙ながらに手を握り締めてくれた。その温かいを手の温もりが、今も私の手に残っている。

One Campは毎年、その姿を変える。“包摂”という言葉には、たくさんの意味が込められている。 “その時、そこに集った人々で、共に生きる生活世界を作る。” その経験が、一人でも多くの青少年に届くことを願っている。

One Camp 2019 Camp Director 阪田晃一

Message キャンプディレクターより

“たとえば1949年、淡路で青年たちがキャンプのプログラムを持った際、それぞれが戦争中の思い出を語り、大きな歴史的過ちを自らも担ったことの悔悟と、そのゆえに歩まねばならぬ贖罪への道を誓って、キャンプファイヤーが涙の集会となったとき、それを眺めていた地元の青年たちにも深い感銘を与えたというエピソードなどが生まれたのである。”— 今井鎮雄 神戸とYMCA100年
 緒言より

YMCA Camp Yoshimaは、こんな思いで作られたキャンプ場です。日本の青年が「戦争責任」に向き合い、青少年と共に「共に生きる」体験を提供するために、1950年にキャンプ場が作られました。

伝統的なキャンプ場で、人々は出会い、愛という火を囲みながら、交わりを深めます。四方を海に囲まれたこの島では、地球環境に対しても、多くの気づきを与えてくれます。YMCA Camp Yoshima で、皆さんをお待ちしております。

Voice キャンプカウンセラーの声

キャンプカウンセラー 
サラさん(高校生)より

LIT Leader in Training
多様性を体感するキャンプ

今からキャンパー達が船で到着するというのに、私はせわしなくうろうろしていた。緊張、不安、初めてカウンセラーとしてキャンプに参加する人はそのような気持ちだろう。私も同じ気持ちだった、キャンパー達と会うまでは。船から降りてくるキャンパー達をみて私は恐怖の気持ちでいっぱいになった。

今年私はリーダートレーニング(LIT)としてOne Campという神戸YMCA主催のキャンプに参加した。福岡YMCAや福島(原発の被害)、台湾、北京からのキャンパーも合流した総勢約150人の大きなキャンプだ。

One Campの特徴は、誰でも参加できるというところだ。障害者、施設に入っている人、大人、子供、誰もが来て良い自由なキャンプだ。事情があり偽名で来ている子、ダウン症の子、障害がある大人、その人達の母親全員が同じキャンパーとして接し合って過ごした4泊5日だった。

私は最初にキャンパーを迎えた時、私よりはるかに大きい人や、障害のある人、日本語を喋れない人にどう接すればいいのか分からなかった。私が怖がっていることに敏感な人達にはすぐ伝わってしまうので、自分の感情を押さえて、自分が一番怖がっていた大人の障害者の人に話しかけるよう積極的に頑張った。けれど、そううまくはいかなく、ビクビクしてしまう自分が悔しかった。

しかし、日がたつにつれて、私は自分が何を怖がっていたのか分からなくなっていた。そして私はやっと気づくことができた。私自身や、私の周りにいる人、障害のある人は同じ人間であり、怖がらないで他の人と同じ接し方をすればよいことを。このキャンプに行くまでは、親や大人、たくさんの人にそう言い聞かされているだけで、自分では分かっているつもりでいた。けれど、これは自分で体験して実感しないと分からないということを知ることができた。障害がある人を“問題がある人”という枠に入れずに、同じ人間として接するということを私だけではなく何人かのキャンパー達も分かっている様子だった。そのキャンパー達は、キャンプのアクティビィティーの時、障害がある人達と戸惑いもせずに一緒に遊んでいた。私の身の回りにいる人、SNSやテレビなどで、言葉だけで障害がある人への差別を良くないと言っている人よりも、キャンパーの方が本当に理解しているのだろうなと思った。

私は、このキャンプにまだ一回しか参加していないので、キャンプディレクターが伝えたいメッセージを全部理解することができなったかもしれない。だが、毎年このキャンプに通えば、また新たなことを学ぶことができると思う。楽しむだけのキャンプではなく、参加しているキャンパー達からも色々学ぶことができた。これからの自分の生活にも生かすことができる大切な経験だった。

パートナー・共催 
京都YWCA総幹事山本知恵さんより

OneCampへの参加

3年前に「異なる境遇で過ごす私たちが、共に生きる世界へ」の構想に共感して実行委員会に参加させていただきました。京都YWCAからは、主に外国ルーツの子どもたちと、社会的養護を必要とする20歳前後のユースに声をかけて、参加しています。YWCAでは、多世代・多文化の協働を枠組みに「セーフスペースを創る」ことに取り組んでいます。まさに、余島でのOneCampは子ども・若者にとってセーフスペースだと感じます。

セーフスペースとは、①安心と思える。②居てもいいと思える③力が発揮できる④認めてもられる⑤失敗してもやり直せる「場所」であり、そこには時間と空間そして、誰か(他者)が必要です。

これまでの生活体験の中では、集団の中で求められる課題がクリアできず、人との関係づくりもうまくいかない経験値が大きい一人一人が、①「今が楽しい、何かやりたい」という前向きな気持ちを持つことができ、②一緒に何かに取り組む「協働のつながり体験」ができ、③意義を感じる達成できる経験を持つことができる、それがOneCampです。

「初めて○○した!」「△△ちゃんとやったで」キャンプの間に経験する一つ一つの出会いと経験が日常に戻った後の「人との関わりに希望を持てる」種になっていると感じています。

*YWCA:The Young Women's Christian Association キリスト教女子青年会
*多文化ルーツの子ども:親や子ども自身が外国籍など、複数の文化背景を持値ながら、日本社会で生活している。YWCAでは、D V被害などの相談者(外国籍の女性)の子どもたちを中心に、学習支援、社会体験プログラムを提供している。
*社会的養護の若者:様々な事情で家族での養育が難しく、里親・養護施設・自立援助ホームなどでの養育経験を持つ。生い立ちの中で「暴力」に晒された経験があり、人間関係構築が難しいことが多い。

Partners パートナー

  • 株式会社上組
  • サントリーホールディングス株式会社
  • 京都YMCA
  • 京都YWCA
パートナー企業・団体
Ladies & Gentlemen よしましよ
生活協同組合コープこうべ
兵庫県ユニセフ協会
はんしん自立の家
学校法人啓明学院
余島リーダーOBOG会
芦屋ワイズメンズクラブ
西宮ワイズメンズクラブ
神戸ワイズメンズクラブ
神戸ポートワイズメンズクラブ
三田ワイズメンズクラブ
宝塚ワイズメンズクラブ
学園ワイズメンズクラブ
香川誠陵中学校
東京都市大学付属小学校
大阪中之島ワイズメンズクラブ
公益財団法人京都YMCA
公益財団法人京都YWCA
北京YMCA
ピーカーブー
non-standard world, Inc
株式会社光陽社
大阪中之島ワイズウィメンズクラブ
株式会社WAPコーポレーション
エコールKOBE
カレッジ・アンコラージュ
社会福祉法人神戸YMCA福祉会
ネットワークパートナー
川中 大輔(シチズンシップ共育企画)
石田 英子(はんしん自立の家)
桒原 康通(京都府立医科大学)
井上 依子(京都YWCA)
山本 亮司(神戸YMCA)
坂本 孝司(神戸YMCA)
佐藤 香菜子(神戸YMCA)
村上 裕亮(川村グループパシフィックサプライ・余島リーダーOB)
林 夏生(富山大学・LGBT法連合会・ダイバーシティラウンジ富山代表)
福井 康代(兵庫県ユニセフ協会)
阿部 俊(啓明学院高等学校)
ロニー・アレキサンダー(神戸大学)
ロビン・ロイド(自然音楽家)
森本 崇資(キャンプディレクター)
横須賀 輝一(神戸YMCA)
佐々木 麻衣(神戸YMCA)
本下 陽一(光陽社)
実行委員
越生 寛子(関西学院大学・神戸YMCA三宮リーダー会)
山口 美弥(関西学院大学・神戸YMCA三宮リーダー会)
古川 由布子(関西学院大学・神戸YMCA三宮リーダー会)
番庄 智也(関西学院大学・神戸YMCA三宮リーダー会)
松谷 優花(関西学院大学・神戸YMCA三宮リーダー会)
竹内 文乃(関西学院大学・神戸YMCA三宮リーダー会)
吉田 茉世(武庫川女子大学・神戸YMCA西宮リーダー会)
河崎 真莉菜(武庫川女子大学・神戸YMCA三宮リーダー会)
濱松 晃大(関西学院大学)
山下 修平(神戸YMCA西神戸リーダー会OB)
大岩 雅典(芦屋ワイズ)
小牧 陽輔(関西学院大学・神戸YMCAリーダー会)
山本 歩実(関西学院大学・神戸YMCA余島リーダー会)
大屋恵 渡(京都YMCAリーダー会OB)
事務局
中村 彰利(京都YMCA)
山本 知恵(京都YWCA)
阪田 晃一(神戸YMCA)

*順不同、敬称略